ここまで、MTコネクターや将来設計義歯を入れた患者さんを紹介してきた。最後にMTコネクターを使った歯科治療をおこなっているドクターを紹介したい。札幌市北区で歯科クリニックを開いている福井淳先生は、患者さんからの口コミやインターネットでMTコネクターを知ったそうだ。「どこでもダメだった。何とかならないか」と、最後の希望をかける相談が圧倒的に多いという。「年々、MTコネクターの手ごたえが大きくなっている実感があります。札幌市内はもちろん、旭川や室蘭、青森県、山形からも患者さんがこられますが、保険での入れ歯作成が物理的に難しいケース、他の歯科でサジを投げられたような難しいケースが増えています」福井先生がMTコネクターを知ったのは平成17年の夏、書店で何気なく手にした先生の本だった。興味を覚えた福井先生がすぐに先生にメールすると、「見にきてよいですよ」との返事をもらって大阪に飛んでいる。「こうしたものの場合、理論と実際は違うことが少なくありません。本音を言うと、本で読んだときは私も半信半疑でしたが、実物を見て目からウロコが落ちました。実際に使用している患者さんからも『しっかり噛めている』と聞きましたし、『これでできるなら、やりたい』と思ったものです」2ヶ月後の11月、「MTコネクターでの治療をしてみますか」と先生に言われ、12月からMTコネクターを使う治療を開始する。以後、毎月、福井先生は大阪まで足を運び、MTコネクターの勉強を重ねた。他の歯科医同様、福井先生もそれまでマグネットを使った入れ歯を始めとするいろいろな入れ歯を扱っていた。しかし、MTコネクターを使うようになって、コネクター以外の入れ歯はすべてやめている。当初はMTコネクターの知名度も低かったが、平成19年のMTコネクターの患者さんは100人程度、平成20年は倍の200人ほどになりそうだという。「本音のところで、入れ歯にしてよかったという人はまずいません。それに、若干の違いはあっても、入れ歯のハード的なものは出そろってしまった感じがあります。インプラントという選択肢もありますが、費用がかさむうえ、手術を嫌がる高齢者も少なくありません。そうした患者さんに、『インプラントでもなく、従来の入れ歯のデメリットを解消したMTコネクターというものがありますよ』という1つの提案ができるわけです。他の歯科クリニックにはない提案で、非常に喜んでいただいています」福井先生が扱うMTコネクターは、大阪の先生の技工所でつくられている。福井先生が取った型を大阪に宅配便で送り、先生から完成したMTコネクターがまた宅配便で送られてくる。微調整は、福井先生が責任を持っておこなうシステムになっている。現在は微調整で悩むこともないが、当初は微調整に苦労したという。毎月のように先生のところで勉強を重ねたといっても、微調整はそう簡単な作業ではない。MTコネクターの微調整の作業は、コンマ数ミリの世界だ。患者さんに待ってもらいながら、電話で先生と微調整のやり取りをしたこともあったそうだ。「私の治療の原点は、患者さんにリスクがないことです。MTコネクターはブリッジのように健康な歯を削る必要がなく、部分入れ歯のようにクラスプ(バネ)で健康な歯に負担をかけることもありません。そのままの状態で入れることが可能で、患者さんにまったくリスクがありません」今後、知名度が高まるにつれ、MTコネクターの希望者急増は問違いない。MTコネクターを理解し、導入するドクターが増えることを願うとともに、MTコネクターをつくれる歯科技工士の育成が急務となるだろう。